「エナの工房に行くの?今、改装中のベントータ・ビーチ・ホテル用のブティックもエナの工房に依頼しているのよ」
とはバワ財団のプリヤンカさん。
ベントータ・ビーチ・ホテルのレセプション天井を、ダンブッラの石窟寺院の壁画のように飾るエナ・デ・シルバのバティック。ジェットウィングライトハウスの螺旋階段を飾るラキの彫刻に並び、スリランカを代表するアート作品の一つと言っても良いかもしれません。
マータレー・ヘリテージ・センター(またはアルヴィハーラ・ヘリテージ・センター)は知る人ぞ知るバティック工房です。1960年代後半から1970年代前半にかけて、ラキ・セナナヤケとエナ・デ・シルバが立ち上げた工房です。
ラキは6-7年後に本格的にディヤブブラに拠点を移したため、エナの工房として知られています。キャンディーからダンブッラを繋ぐメイン道路からちょっと中へ入った丘上。入り口を進むと、道路脇に干された色鮮やかなバティクが早速お目見え。
これこれエナのデザイン!今まで目にしてきたお気に入りのバティックが全てここで作られたんだと思うと感極まり、シャッターを推し続けます。
迎えてくださったのは結婚後コロンボからマータレーへ移り住み7年。ここ1-2年働いているというアトゥサラさん。
「もしやこれはベントータ・ビーチ・ホテルの…」
「そう、ベントータ・ビーチ用のものと、セルビアからのオーダーのバティックを現在製作中です」
すると、黄緑色の素敵なサリーを纏った、いかにもボス!という感じの白髪の女性がニコニコしながら歩いて来ます。現在この工房を取り仕切っているチャンドラさん。御歳不明。
「あなたがビッグボスですね!」
「エナのヘッドレディーとして働いてたのよ。何年って?50年くらいかしら、オホホホ。こ〜んな小さい時に工房で働き始めたのよ」
「工房で働いているのは全部で28人ほど。エナが亡くなってから4年。どうにかやってるわ!ベントータ・ビーチのバティックは今年中に160点も作らなきゃいけないのよ」
と元気いっぱい。エナ・デ・シルバは2015年にお亡くなりになりましたが、ご存命の時にお会いできなかったのがなんとも苦やましい。だけど、エナのデザインも、エナの工房もまだまだここで生き続けてるんだと、会えなかったなんて、そんなことどうでもいいか!
そんな風に思えるほどカラフルでエネルギッシュなバティックに私もなんだかパワーをいただきました。そして楽しそうに勤務する女性たちからも。
5色の色を出すためには、ロウを塗り、布を染め、ロウを除いて…という作業を5回繰り返さなければいけません。色数が多いほど手間がかかっています。お湯でロウを溶かして引き上げるところ。
どれどれ、よしよし。
パタパタ
「あらー!!!」
一人が声をあげると、工房のスタッフ皆んなが一斉に振り返ります。
「わー!綺麗な色が出たわね!」
ロウを落とした布が洗濯紐にかけられます。風になびくバティック。皆んな嬉しそうです。
これが新しいベントータ・ビーチ・ホテルのレセプション天井を飾るのかと思うとなんとも言えない気持ちです。本当にいい時に訪れました!
KSTCは『エナ・デ・シルバ展』を応援しています!
著名なスリランカ人建築家ジェフリー・バワと共に活躍したテキスタイルアーティスト、エナ・デ・シルバの展示会が東京新宿のアートコンプレックスセンターにて開催されます。クラウドファンディングにも挑戦中!是非応援ください。